<体力の正体は筋肉/第2章:体の動くところに筋肉あり(1)>

体が動くのは骨格筋のおかげ

体のなかで動くところには、必ず筋肉があります。筋肉がないところは動かない、そう言い切っていいでしょう。

手や脚はもちろんのこと、細かいところでいえば、まぶたが上がるのは眼瞼挙筋、眼球が動くのは外眼筋という筋肉があるからです。

体のどこにあるのかによって筋肉には固有の働きがあり、すべてに名前(筋名)が付けられています。最近はマッチョ・ブームですから、もしかして、上腕二頭筋、大腿四頭筋といった名前ぐらいは聞いた覚えがある人も多いのではないでしょうか。

さて、その筋肉ですが、大きく分けると、
骨格筋(体を動かす)
心筋(心臓の壁をつくり、血液を全身に送り出す)
内臓筋(血管や内臓諸器官の壁をつくる)
の3種類があります。

骨格筋は意識的に動かせるので「随意筋」、心筋・内臓筋は意識的に動かせないので「不随意筋」の分類に入ります。

私たちの手や脚がなぜ動くのかというと、関節をまたいで2つの骨にくっついている骨格筋のおかげです。そのなかにある「筋線維」と呼ばれる筋細胞の束がのびたり縮んだりして骨格筋の長さが変化すると、関節を軸にして骨と骨との距離が近づいたり離れたりします。

つまり、体が動くのは、このように骨格筋の収縮のおかげで関節が動くからです。

なぜ体は硬くなってしまうのか

「最近、体が硬くなったなぁ」と実感することはないでしょうか。これも筋肉と関係しています。

ちょっと前まで、座って前屈をすると、手の指先がつま先にまで余裕で届いたのに、気づいたらできなくなっていて愕然としてしまう。体が硬くなれば、歩いたりしゃがんだりといったさまざまな日常動作もスムーズにできなくなります。

なぜ、そうなってしまうのか。

原因として、体の組織の柔軟性が低下したり、関節の動く範囲(可動域)が狭くなってしまったことなどが考えられます。

動物の器官を構成する組織には、「結合組織」「上皮組織」「筋組織」「神経組織」の4つがあります。このうち、他の組織をお互いに結びつける役割をしているのが結合組織で、その成分が、最近耳にしないことがないほど有名になったコラーゲンというたんぱく質です。組織の強度や弾力性を保っているのは、コラーゲンのおかげです。

ところが、この成分やお互いの結合のしかた(クロスリンク)が年齢を重ねるとともに変化すると、体の柔軟性が低下してしまいます。

このように、組織の硬度(スティフネス)が増すと骨格筋の伸長抵抗性(のびることに対して抵抗しようとする性質)が強くなってしまい、関節の動く範囲が狭まって体が硬くなったという実感につながります。

柔軟性も体力を構成する要素ですから、柔軟性が失われて体が硬くなるのも、間違いなく体力が衰えたことのあらわれの1つといっていいでしょう。

(つづく)

※「体力の正体は筋肉」(樋口満、集英社新書)より抜粋